2016年2月25日木曜日

京の酒、めなみの夜






   京都出張の酒。ひと晩め、三条京阪のおばんざい「めなみ」へゆく。
   以前、仕事で先斗町の旅籠に二カ月ちかく滞在したことがあり、そのとき、宿のご亭主によく連れていっていただいた。ご亭主のお父さんの代からかよっていたお店だそうで、戦前からあるという。

    おばんざいは「万菜」とも書くけど、カウンターには大鉢がならべられ、そこに生ゆば春巻、牛脛肉、京野菜のたいたんなど、さまざまなおかずがはいっている。このスタイルをあみだしたのが、めなみさんだといわれているのだ。
    いまのめなみさんはカジュアルな割烹というかんじだが、本来は、京都の伝統料理や家庭料理を気軽に外食できるお店が万菜。晩ごはんを食べにゆくお店だから、おばんざいという地元のひともいる。京都の町のひとはふつうに居酒屋としかいわない。めなみさんも、だし巻き卵や焼き鳥をだしたりする。
    京都撮影所時代、小津安二郎監督もよくきたそうで、映画『お茶漬けの味』にでてくる店は、ここをモデルにしたとか。

    肴はお造りではじめる。京都でよく食される、ぐじのお造り。ねっとり、舌先にからまるような身でいて、味はこくがあるのに、淡白。鱧やぐじを食べると、ああ京都にきたなぁ、と実感する。
   酒は、白雪のぬる燗で統一。
   めなみさんで、かならず食べたいのは、おから。口に含むと、すこし酸味をかんじる。もちろん酢がはいっているのではなく、おだしの旨味がきいていて、舌がそうかんじるのだ。

    昆布、かつおなどからていねいにひいたおだしは、塩分ひかえめだけれど、関東育ちのぼくにとってはそれだけで濃厚な風味にかんじる。旅籠のご亭主がいうには、おだしにしても昆布とかつおのふし(鰹節)や椎茸などをベースにした「白」、野菜や大豆をくわえる「緑」、うるめいわしのふし、あごのふしなど各種魚貝のふしをくわえる「赤」など、いろんなだしがあるのだとか。そして、さらに一番、二番、三番などといって、おだしをひいてゆく。「これがむかしからの京都庶民の味、基本形」なのだそう。ご亭主がぼくをよくめなみさんにつれてきてくれたのは、「ほんまの京の味を覚えてほしい」からだそうな。
    おからとともにぜひ食べてほしいのが、京大根とおあげのたいたん。カウンターの鉢にも面取りした厚みのある京大根が、このおだしにつかっている。だしのよく染みた大根、だしをよく吸ったふわふわのおあげに、山椒をふりかけて、「あつっ、あつっ」とかいいながら食べるのだ。

    さいごは、かす汁、漬物とご飯をもらって〆。祇園の「さんぼあ」にゆくころには、都の夜はしんしんと冷え、更けてゆく。

     来週はふた晩め、「ごだん   宮ざわ」さん。

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