2015年6月12日金曜日

夜の豆かん



   イベントに打ち合わせ、〆切ズが明けたら無理がたたってお約束の耳鳴り。
   こうなると人間は平目のごとく水平性の生物になるしかなく、シーツの白砂に同化してすごすしかない。そんなわけで、ブログが更新できずに、すみませんでした。
   ことの発端は火曜日。大阪で開催した「まどろみの島ーuisce agus loch」の第二弾の打ち合わせのため、大阪から仕事で上京した写真家・赤阪友昭さんとともに蔵前の某ギャラリーへ。打ち合わせは順調にすすむ。今秋の開催はさすがに厳しいので、来年の春あたりだろうか、などと話しながら次の打ち合わせに向かう友さんを送りつつ、ぼくはかるく一杯のつもりで浅草の鰻の老舗「やっ古」へ。ところが、おやすみ。そして、ここから歯車が狂いだす。
   なにせ暑かったので新橋の名ビアホール「ビアライゼ」に飛びこみ、メンチカツと枝豆、アサヒまるFなど四杯をおかわり。それから蕎麦や呑みをはさんで、小津安二郎が愛した老舗バー「ジョンベッグ」でドライマルチ二、バラライカ、ベッグ、ロイヤル30年など。すでに酩酊気味ながら、浦和で下車。「田楽」へ。すると常連のマサさんがいて、「先生、いま83年のシャトー・ラ・ミッション・オーブリオンがあいたところです」。
    ろれつのまわらない舌でワイン談義?を終えたのは21時前。新橋駅で下車してから五時間が経過。ワインをごちそうしてくれ、運転手つきの社用車で帰ってゆくマサさんに敬礼。ぼくは徒歩で近くの「ときわだんご」へ。
    閉店ぎりぎりまえ。いつもの「豆かん」をたのむ。老舗の豆かんは、ほとんど甘みがなく、ドライ。黒蜜がほんとうに微糖なので、蒸し豆とかんてんの天草、自然の香りと冷たい食感が豆かんを構成する味のすべて。ぼくは酒を呑んだ〆はいつもこれ。閉店時間に間にあうようにと、長い酒が減った。お土産に豆かんを二個つつんでもらう。思えばこのとき、浦和なのにオーロラの音がしていた。耳のなかで夜が燃えているような。
    最寄り駅に着いたら、財布のなかは空っぽ。駅から半時間ほど歩いて帰宅。翌朝は耳鳴りだか二日酔いだかわからない頭痛。詩人の平目、一丁あがり。  

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