2015年3月9日月曜日

パリ、ジュリアン・グラックの草稿展

 



   パリのトリヴィアのつづき。ソルボンヌ大学の近くにある書店。かの伝説の作家、ジュリアン・グラックの草稿展が開催されていたのに偶然、出くわした。その理由は、上の写真。第二次大戦期の草稿をまとめた研究書が上梓され、その出版フェアらしい。表紙にあるのが、グラックの手書き草稿の写真。店内はもちろん撮影禁止だった。
    点数はすくないものの、アンドレ・ブルトンとの親密な手紙や、1980年の『読みながら書きながら』 "En lisant en écrivant"などの草稿が飾られ、充実した展示だった。なによりグラックの自筆草稿。方眼紙に踊る、細字の万年筆でちいさく綴られた流麗な筆蹟を真近に見たときは、感動した。寡作にして秘教的な作風ともいえる文学者ゆえに、その肉筆を見ることができるなんて、夢にも思わなかった。
   パリにくると、こんなことも起こりえる。旅の僥倖にただ感謝して、近くのカフェで白ワインを呑んだ。興奮はなかなか冷めなかった。

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