2012年11月19日月曜日

温泉と大宮の居酒屋、寺山修司風


急ぎの原稿を脱稿したもので、

疲れをとりに温泉へ。

春日部温泉「湯楽の里」にいってみる。

天然温泉かけ流しの湯は、

茶濁した深海水層から引き上げたお湯で、

ちょっとしょっぱい。

夕焼けのオレンジ色の日だまりで

露天風呂につかりながら広い空を見上げます。

坊主頭を昨日よりちょっと冷たい秋風が吹き過ぎて。

それにしても春日部で天然温泉に入れるとは、

信じがたいと感慨に浸りつつ生ビール。



今年の春に16年住んだ東京を離れ、

さいたまに帰って感じたのは、

随分と都会的になったなあということ。

温泉のあと、当然、どこかで呑みたくなって、

大宮の「多雲房」(たんぼ)へ。

裏路地にひっそりと暖簾がかかる、

入口は江戸的隠れ家居酒屋。

地酒マニアには知られた老舗です。

純米吟醸雪鶴(もち、ぬる燗)ではじめて、

おつまみは、ここの名物「山うに豆腐」。

特殊な味噌豆腐で海胆に匹敵するクリーミーさ。

原材料に乳製品を使っていないのに。


つづいて、豊後の鯖刺し。

薄く刺してあるので、活きのいい身と脂が

じゅわっと口中にとろけて広がります。


秋の醍醐味、新さんま刺しは

これも大変新鮮なので身の断面が三色に。


酒と肴が旨いので、平日の早い時間に

ときどき立ち寄りますが、

店内は寺山修司映画作品書割風に独特のムード。

昭和の匂いただよう温泉旅館の居間のような座敷で

赤番傘をランプシェードに、マスターの描いた

屏風絵が飾られる(店内写真は非掲載、ご来店を)。

ちょっと大宮にいることを忘れます。


家では普段、蓮田の酒、神龜の純米辛口を呑んでいます。

神龜を初めて口にしたのはこの店だったような。

その後、西荻窪にあったバードランドで神龜と再会。

埼玉の知られざる名酒を都内で発見して驚きました。

それも10数年前の話。

カリスマ焼鳥屋さんの先見の明に敬礼。


あさってからフランスに行くので、

温泉と居酒屋コースともしばしお別れ。

(次回更新は12/5以降です)

2012年11月16日金曜日

小鳥が笑った




庭の大銀杏が黄金色に輝く日。

スカイパーフェクTVで放映中の

詩とアートの番組「Edge」の取材を受けました。

前回の出演から約10年ぶり。

撮影場所も青山から、さいたま、に。

平田ディレクターとも10年ぶりに再会できました。

番組の放映スケジュールは未定ですが、

201135日にワタリウム美術館で開催された、

オールナイト・ポエトリー・リーディングの

出演者をひとり一人訪ね歩き、

インタビューされているとのこと。

ぼくはインタビューにひきつづき、

子どもの頃から見上げて育った

大銀杏の金色のそよぎの袂で、

『まどろみの島』から数篇を読みました。

秋の真下にたたずんでいる気持ちで。

そんな、ひととときをいただきました。


リーディングがあったのは、「3.11」の6日前。

それから多くの方々が、

受け入れがたい現実を目のあたりにしました。

詩のひとつの側面は日々の受け入れがたい現実を

言葉で受けとめる行為だと思います。

忘れてしまったり、見ないふりをしたり、悩んだり。

普段は通り過すぎてしまう小さな悲しみも、大いなる悲劇も、

きちんと丁寧に見つめて、言葉へと刻む。

そんな言葉のありようだと思います。

もちろん、笑いや、歓びも。




















ここに引っ越してきて、

ひとつわかったことがあります。

田村隆一に『小鳥が笑った』という詩集があります。

この「小鳥が笑った」というフレーズ。

東京に住んでいたとき、ぼくは

詩人一流のレトリックだと思っていました。

今の季節、庭にはたくさんの野鳥がきます。

オリーブ色のカワラヒワにコジュウカラ、

ノビタキ、モズetc

朝から晩まで柿や菩提樹の蕾をめぐって、

かしましく啼いて、枝から枝へ陣取り合戦をします。

でも夜明けの数分間の歌声だけは、ちがいます。

のびやかでピースフルな、今日をはじめる小鳥たちの合唱。

ピール、ピルルル、ピーピー。チョッ、チョッ。

ほんとうに、鳥たちは笑っているのです。

2012年11月11日日曜日

新詩集『まどろみの島』を上梓しました。


 
 
はじめまして。

詩人の石田瑞穂です。

 

「ブログとかやらないの?」と言われつづけて数年。

今になって、ですが、

週1回以上更新をめざしてがんばります。

 

約6年ぶりに、詩集を出すことができました。

 

6年ぶりにもかかわらず、

『まどろみの島』のちいさな広告を見て、

お問い合わせをいただきました。

 

とてもうれしく、感謝しております。

 

編集は『現代詩手帖』総編集長の高木真史さんが

みずからかってでてくれました。

 

装幀は小説家の川上未映子さんの本も担当されている

ブックデザイナー奥定泰之さんの仕事。

 

海を思わせる淡いブルーに、

空の箔押しが島のようにうっすら浮かびあがる。

帯はある角度から眺めると、

渚みたく光ります。

 

自分にはもったいないような、

このA5判形のちいさな詩集は、

神楽坂のアイリッシュバーで

自著になにも注文をださない詩人に、

エディターとデザイナーが心を砕いて

考えてくれた本です。

 

(献辞を固辞された高木総編集長、

この場を借りてお礼を申し上げます)

 

このブログページは、新詩集のお祝いに、

妻がプレゼントしてくれたもの。

 

ぼくが綴った新しい詩集は、

亡き従妹へのレクイエムです。

 

彼女のお母さんは毎日せっせと

新鮮で美味しい野菜を育て、

ぼくら家族に届けてくれます。

 

さまざまな人のつながりと、想いが、

天国で暮らす彼女にも届きますように。